完全数

コンピュータ教室で「完全数といういうのがある」と言って簡単に説明したあとのことだった。授業が終りホワイトボードを消していると数人の学生がもっと詳しく知りたいと近寄ってきた。

ここでは、ディクソン『数の理論の歴史』第1巻「Divisibility and Primality」,1919 のなかから話題を引用しながら紹介する。

「前書き」にある、1ページ目の下にある例から話をはじめることにする。

 6=1+2+3 のように、その数の約数の和 ー ただし自分自身は除く ー に等しいものが完全数である。

これが完全数の定義なのだが、話は古代ギリシアからはじまった。

 2 ^ (p - 1) * (2 ^ p - 1) は、 (2 ^ p - 1) が素数ならば、完全数になることをユークリッドが証明した

実際、p=2,3,5,7 について(2 ^ p - 1) を試してみれば 3,7,31,127 は素数なので、

2 ^ (p - 1) * (2 ^ p - 1)は

p=2;  2*3=6

p=3;  4*7=28

p=5; 16*31=496

p=7; 64*127=32*254=16*508=8*1016=8128

 6, 28, 496, 8128 となり、4番目までの完全数がそろった。

これは、A.D.100頃にNicomachusにより示されたとディクソンは云う。

1456年の日付がある手稿に正確な5番目の完全数 33550336 が記されていた。これは、p が 13 に対応する。

p=13;  4096*8191=2048*16382=1024*32764=32764000+24*32764=...=32764000+786336=33550336

この本の前書きによれば 2^p - 1 は、奇数 p すべてについて素数だと信じていたらしい。

しかし 1536 年に Regius が

 2^9 -1 = 511 = 7*53,         2^11 -1 = 2047 = 23*89

が素数でないことを示し、さきほどの5番目の完全数を見つけたとある。

このあたりまでが、素朴な計算法で追随できる限界だろうか。


イタリア人数学者の  Pietro Antonio Cataldi (15 April 1548, Bologna – 11 February 1626, Bologna) によってこれまでに知られているうちでは最も古い数学アカデミーがボローニャにつくられたとディクソンの本にあるのだが、1603年に 2^p -1 が合成数となるのは、 p が合成数のときであること。さらに p=13,17,19 のとき、2^p -1 は素数であることを証明したという。

たしかめてみると、

2^13 -1 = 8192 - 1 = 8191 は素数である。

2^17 -1 = 131072 - 1 = 131071 も素数。

2^19 -1 = 524288 - 1 = 524287 も素数。

そこまではよかったのだが、 Cataldi は p=23,29,37 についても 2^p -1 が素数であると宣言してしまった。これが間違いであることは、現代では手元にあるスマホで確かめることができる。

たとえば、JSoftware .

   (2^23)-1

8388607

q:8388607

47 178481

となり、2^23 -1 = 8388607 に、約数47があることがすぐわかる。

この p=23 の場合については、1640年にフェルマーが約数 47 を、p=37 については約数 223 を示した。

ちなみに、J で計算してみると次のようになった。

   (2^37)-1

137438953471

q:137438953471

223 616318177

p=29 については、1732年オイラーが約数1103があることを見つけた。

さて完全数についての話の筋を続けよう。では、ユークリッドが証明した「2 ^ (p - 1) * (2 ^ p - 1) は、 (2 ^ p - 1) が素数ならば、完全数になる」は5番目以降の実例ではどうなるのだろうか。

ここで歴史上有名なメルセンヌの話になる。